これぞミュージカルの力！城田優主演・演出、魅せるミステリー＆コメディ！『カーテンズ』観劇レビュー

2022.03.09

ミュージカル『カーテンズ』撮影・伊藤智美

『カーテンズ』は2007年にブロードウェイで初演しトニー賞８部門でノミネートされたヒット作。日本では東山紀之さん主演で2010年に上演。今回、城田優さんが主演にして演出も務め、新カンパニーでの上演となります！

ミュージカル『カーテンズ』撮影・伊藤智美

舞台はボストン。軽快なポップスと共に開演します。港町の香りがしてきそうな空気感の中、まるで自分もその世界に入り込んだかのような幕開きにワクワク。

この作品はある劇場の舞台で起きた殺人事件を、劇場内全員が容疑者候補！？という中で警部補チョフィが事件の解決に取り組んでいく物語です。

事件現場に駆け付けた主人公の警部補チョフィは城田優さんが演じます。さらっと着こなしたスーツが舞台に良く映えていて、明るく軽快な台詞回しが印象的でした。アドリブなのかそうでないのか分からないユニークな台詞は掴みどころのないチョフィのキャラクターにぴったり！そして特筆すべきはチョフィは自称ミューオタ（ミュージカルオタク）。事件の捜査をしつつも、つい舞台の作品が気になってしまい演出に首をつっこむかわいい警部補を見ることができます。

ミュージカル『カーテンズ』撮影・伊藤智美

菅井友香さん演じるニキは舞台に出演している新人女優。もしかして犯人では…？と周囲を驚かせる突拍子のない言動がしばしば。菅井さんはミュージカル初挑戦とのことですが、初々しい動きや天然さがニキのキャラクターに合っていてとても素敵でした。

三浦翔平さんはスターダンサーのボビーを演じます。菅井さん同様ミュージカル初挑戦でダンスは時間をかけてお稽古されたとのことで、足さばきや立ち姿がきれいでスマートな男性に見えました！特に色気のある声は誰もを魅了するスターダンサーとしてのオーラを感じました。

ミュージカル『カーテンズ』撮影・伊藤智美

瀬奈じゅんさん演じる作詞担当のジョージア。事件の影響で戸惑いながらも代役で主演を演じることになる役ですが、瀬奈さんの品があり且つチャーミングな佇まいがとても印象的で既にヒロインの雰囲気たっぷり。（そのジョージアが鋭いツッコミをするので笑えてしまうのですが）１フレーズ歌い出した途端、ジョージアのサイドストーリーが始まるような錯覚すら覚えました。

作曲担当のアーロンには岸祐二さん。主にピアノに向かっている場面が多く、その表情からアーロンの心情が見え隠れします。代役稽古で不在のジョージアを想い、一人ピアノに向かい「恋しい」と歌い始める場面は切ない思いと豊かな声とで胸がいっぱいになりました。（思わずアーロンのサイドストーリーも見たいな…と思ってしまいました。）

舞台のプロデューサー・カルメン役には原田薫さん。時には敏腕プロデューサーとしての顔、時には出演女優の一人バンビの母親としての顔。話し方や“間”、歩き方にも迫力があり、緩急のある巧みなお芝居と表現で原田さんの存在自体がカーテンズの世界に深みを与えてると感じました。

カルメンの娘、バンビ役には中嶋紗希さん。自分の力でブロードウェイを目指す若手女優で母親に反発していますがどこかで認められたいという一面も。気の強い女の子ですがどこか憎めないキャラクターで個人的に一番好きなお役でした。仕草や歩き方、体のラインがとても綺麗で劇中劇で披露しているダンスは必見です！

チョフィはそれぞれの人物と関わりながらも事情聴取を行い、また公演の演出にも口を出していきます。そして事件解決と公演再開を目指しますが、やがて第２の事件が起こります・・。

ミュージカル『カーテンズ』撮影・伊藤智美

この舞台の見どころは個性的すぎるキャラクター達。オタク気質なチョフィ、予測がつかない動きをするニキ、ナルシストなボビー。ジョージアとアーロン、カルメンとバンビ。それぞれのスピンオフが見てみたいと思ってしまうほど個性豊かで魅力的なキャラクターばかりです。

また胸躍る魅力的なナンバーも必見。特に犯人は誰だと全員が疑心暗鬼になる中、バラバラになりそうなカンパニーにプロデューサーのカルメンが一喝、「“Show must go on”　上演を続けるんだ」と力強く歌い出す場面では次第に全員が参加し、肩を組み歌い踊ります。THEミュージカルなナンバーに胸高鳴り思わずこれこれ！と思わずにはいられませんでした。なにより、劇中で事件解決を目指し幕を上げようとするチョフィや出演者達が、このご時世でも演劇の灯を絶やさぬよう舞台に立つキャストの方々の姿と重なりとても胸が熱くなりました。

ミュージカル『カーテンズ』撮影・伊藤智美