8か月、8公演の中止を経ていよいよ再開! W.シェイクスピア×B.ブリテン『夏の夜の夢』が新国立劇場で開幕。イギリスの産んだ傑作喜劇が新しい時代の幕開けを飾る!
オペラ『夏の夜の夢』 撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場 オペラ『夏の夜の夢』が10月4日(日)に新国立劇場オペラパレスで開幕。8か月、8公演の中止を経て再始動を果たした。 天井を覆う樹の格子と、倒木、扉、戸棚、月明かり。そこは深い森の中のようで、秘密の隠れ家のような、神秘的でいて、どこか生活感の漂うそんな空間。ボーイソプラノが歌う美しい調べが僕らを妖精の世界に誘う。 妖精の女王・タイターニアのコロラトゥーラと妖精王・オベロンのカウンターテナーの中性的な響きが幻想的な森の営みを感じさせる。そこに現れるゴブリンともロビン・グッドフェローとも呼ばれるいたずら者のパック。森に迷い込んだ駆け落ち中のハーミアとライサンダーのカップルとそれを追ってきたハーミアの婚約者ディミートリアスと彼に恋するヘレナの4人の若者たち。 オペラ『夏の夜の夢』 撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場 そして、アテネ大公シーシアスの結婚式の余興の芝居のために森でひそかに稽古を始める滑稽な職人たち。ウィリアム・シェークスピアの名作『夏の夜の夢』がイギリスの名作曲家ベンジャミン・ブリテンの軽妙洒脱な音楽によって魔法の花のしずくとパックのいたずらが巻き起こす騒動を生き生きと形づくる。 オペラ『夏の夜の夢』 撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場 ソーシャルディスタンスと飛沫感染予防に配慮したニューノーマル時代の演出! 今年の2月『セビリアの理髪師』以来8か月ぶりとなる新国立劇場オペラの再開は、この荒唐無稽な喜劇『夏の夜の夢』から始まった。新型コロナウィルスCovid-19対策のため、オリジナルのデイヴィッド・マクヴィカーの原演出をレイ・スミスの舞台美術・衣裳をそのままにニューノーマル時代の新演出としてレア・ハウスマンが打ち出したものは、非接触の舞台表現。全世界が苦しめられている新型コロナウィルスに立ち向かう表現者たちの第一歩をしっかりと歩みだした。 オペラ『夏の夜の夢』 撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場 当初予定していた外国からの招聘キャストの入国制限などの事情からオール日本人キャストで臨むことになった今作。演出もリモートで行ったという異例づくめながら、だからこそ舞台上も観客席もこの日本で、共に新型コロナに立ち向かうモノとして不思議な一体感を持つことのできる作品に仕上がっている。 ≪非日常≫を臨む舞台ながらも≪日常≫を感じさせざるを得ない舞台上の新型コロナ感染予防対策は、また私たち観客にこれから舞台とどう向き合っていくべきなのかを問いかけているようにも感じる。 いたずら者のパックが最後に拝借する私たち観客の『手』はいったいどこへ向かうのか? オペラ『夏の夜の夢』 撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場 どうか一日も早く、共に手を取り、肩を抱き、体を寄せ合うような、そんな≪日常≫が訪れることを願いながら、今は新国立劇場オペラの再開を心から祝いたいと思う。 本作は10月4日(日)より新国立劇場オペラパレスにて開幕。 詳細は公式サイトで。 (撮影:寺司正彦 写真提供:新国立劇場 文:平岡基)