相葉雅紀12年ぶりの舞台『ようこそ、ミナト先生』/町民の機微に触れ動き出す人間関係
舞台『ようこそ、ミナト先生』 撮影:田中亜紀 相葉雅紀12年ぶりの舞台『ようこそ、ミナト先生』/町民の機微に触れ動き出す人間関係 12年前の「君と見る千の夢」以来となる脚本家金子ありさ×演出家宮田慶子×相葉雅紀コンビ。今回の『ようこそ、ミナト先生』は町や人生の”再生”がテーマ。 甲信越地方の山あいにある町、日永町に観光で訪れ一年前よりこの町の非常勤の音楽教師として働くことになった湊孝成。みんなから”ミナト先生”と慕われる人物と町民との心温まる物語だ。 舞台『ようこそ、ミナト先生』 撮影:田中亜紀 ミナト先生こと湊孝成(相葉雅紀)は町民たちのお手伝いを喜んで引き受け、「もう~また自分の用事増やしちゃって」と近所のおばちゃんに呆れられる優しい若者。白シャツがよく似合っており、さわやかな出で立ちで真剣にカタツムリに語りかける姿も”らしさ”全開。町民のいざこざが起きた時も唐突に「ラーメン食べませんか」「指相撲で決めましょう」と”ふわっと明後日の方向の話”をして周囲を和ませる。町民にとって希望の光のような存在だ。しかしそこには影もあり湊はある秘密を抱えている。劇中には突然段ボールを蹴っ飛ばすシーンも。 湊の心優しい配慮は町の橋向こうまで及ぶ。気難しい植村のじいさん(松平健)の家にも定期的に訪れるがじいさんは心を開こうとせず相変わらず相手にされない。松平の年月を重ねた深み、他人を簡単には立ち入らせない重みのある芝居が光る。顔を突き合わせる芝居の多い2人は、目線のやり方等を工夫し松平のリードで芝居の呼吸がしやすくなり上手く進んでいく場面もあったという。 舞台『ようこそ、ミナト先生』 撮影:田中亜紀 ミナト先生は築200年の古民家の公民館に住み、そこには町民がよく集まる。古民家のセットや植物もよく作りこまれており、照明にも田舎町の懐かしい雰囲気がある。演奏には主に重低音の響く弦楽器が使われ、ゆっくり流れる町の空気を感じさせる。 劇中には”移住”、”ステイホーム”、”マッチングアプリ”。コロナ渦でのここ数年での流行やよく使われるようになった言葉なども登場する。また地方で問題となる高齢化社会や過疎化にこの日永町も向き合い、再生に取り組んでいく。 ”ご近所付き合い”文化、そのため誰がどこで何をしているか知られてしまう閉鎖的な町内コミュニティ。町に住む人たちはお互い助け合い作用し合い暮らしている。そこには人と関わり合うことの尊さと温かみを感じる。近年ではその様なつながりも希薄になってきている。その点で”今ここにあるものに気づいていくこと”の大切さ、心地よさを再認識できる作品であると言えるのではないか。 舞台『ようこそ、ミナト先生』 撮影:田中亜紀 初日が明け約一週間が経ち公演も折り返し地点。 今のご時世に人のつながりや温かさを感じると共に、 町とそれぞれの人生の変化、そして再生までの過程を見守りたい。 公演の詳細は公式サイトで。 https://www.minatosensei.com/ (撮影:田中亜紀 文・真来こはる)