京本大我がパワフルに舞台を牽引!ミュージカル『ニュージーズ』観劇レビュー
ミュージカル『ニュージーズ』 写真提供/東宝演劇部
京本大我がパワフルに舞台を牽引!ミュージカル『ニュージーズ』観劇レビュー
ディズニーの大ヒットミュージカル『ニュージーズ』が東京・日生劇場で上演中だ。
本作品は19世紀末のニューヨークを舞台に新聞販売の少年たち“ニュージーズ”の奮闘を描いた同名映画を原作に、ブロードウェイではディズニー・シアトリカル・プロダクションズの製作により初演。トニー賞8部門にノミネートされ、数々の賞を受賞した。『美女と野獣』、『アラジン』、『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』などのヒット作を手掛けたアラン・メンケンの美しいメロディーと、躍動感溢れるダンス・ナンバーが盛りだくさんのミュージカルだ。日本初演となる今回は、日本のミュージカル界を牽引し続ける小池修一郎(宝塚歌劇団)のもと、新演出版として上演。本来ならば昨年5月に幕を開ける予定であったが、新型コロナウイルスの影響で残念ながらで全公演中止となった経緯もあり、演劇ファンにとっても待望の上演となった。
舞台は19世紀末のニューヨーク。孤児やホームレスの新聞販売少年たち“ニュージーズ”は、決して恵まれた環境・労働条件ではない中でも、路上で懸命に新聞を売り生計を立てていた。そんな中、「ワールド」紙のオーナー・ピュリツァーは他社より儲けようと、販売価格は据え置きでニュージーズへの新聞卸値を引き上げることを宣言。少年たちに不利な条件が突きつけられる。この理不尽な値上げに対し、ニュージーズはリーダー格の少年・ジャックの先導のもと、“ストライキ”を起こそうと団結。権力者と闘う少年たちの姿が力強く描かれる。
ニュージーズのリーダー・ジャックを演じるのは、近年舞台での活躍も目覚ましい京本大我。カリスマ性を感じさせながらも、仲間思いのやさしさや胸の内の熱さが伝わってくるリーダー像を多彩な表現で魅せる。その姿はそのまま「座長」としての大きさにも見え、頼もしい姿が印象に残る。本作はダイナミックなダンスシーンが見どころだが、ずば抜けた身体能力を持つニュージーズのメンバーを率いるリーダーとしても、京本の持ち前のダンススキルが光る。そして何よりも驚いたのは、圧倒的な進化を感じさせられた、伸びやかで力強い歌声だ。筆者は『エリザベート』のルドルフ役以来、約2年ぶりに京本の歌声を耳にしたが、本作での歌いっぷりを観て、「あの作品やあの役でも観てみたい!」と、今後のミュージカルでの活躍の期待が一層高まった。とくに一幕ラスト、ジャックがソロで歌う「Santa Fe」は必聴のナンバーだ。
ミュージカル『ニュージーズ』 写真提供/東宝演劇部
若き女性記者で、ニュージーズを応援するキャサリン役の咲妃みゆは、聡明で自立した女性を魅力的に演じ、その時代に立ち向かっていく姿は誰もが応援したくなるだろう。
キャサリンが劇評を書くため、観劇中にメモを取るシーンがあるのだが、「今、まさに同じことをしている!」と、個人的に親近感が湧く場面に遭遇し、ちょっと愉快な気持ちになったりも。
どんな役を演じていても説得力のある芝居が印象に残る咲妃だが、ジャックとのシーンでは宝塚時代の経験も存分に活きているように見え、京本と組んで踊る姿は「さすが元トップ娘役」といった風情。「これからの時代を共に変えていこう」と希望を感じさせる二人の姿が輝かしく映る。
ミュージカル『ニュージーズ』 写真提供/東宝演劇部
松岡広大が演じるクラッチーは、ジャックの弟的存在で、右足の不自由な少年。ムードメーカー的な一面もあり、彼の笑顔に周囲も安心するような明るさが魅力的だ。ジャックとのバディ感も観ていて心が温まる。常に杖をつきながらという役だが、本来の身体能力の高さがあるからこそ演じられる難役でもあると感じた。役作りで心がけた部分を聞いてみたくなるような、存在感の大きな役どころだ。
父親の失業がきっかけで、弟を連れてニュージーズに加わることになる少年・デイヴィを演じるのは、加藤清史郎。他の少年たちとは違うバックグラウンドがあるからこそ、冷静な視点も持ち合わせる少年をしっかりと演じ、その姿からは子役時代の面影は感じられない。後半では、ジャックを支える頼もしい姿にも注目だ。
ジャックたちを取り巻く“大人勢”の存在も忘れてはならない。
霧矢大夢演じるメッダは、ジャックと互いに信頼を寄せつつ、若者を見守る大人の女性を好演。劇場での歌唱シーンとダンスで魅せる華やかさはさすがの貫禄である。
ニュージーズに立ちはだかる権力者、ピュリツァーを演じる松平健は、立っているだけで威厳を感じる存在の大きさが、作品全体をピリッと締めている。
ミュージカル『ニュージーズ』 写真提供/東宝演劇部
ミュージカル『ニュージーズ』 写真提供/東宝演劇部
コロナ禍でさらに経済格差が進み顕在化された今、作品のテーマがより現実的なものとして感じられる部分もあったが、ニュージーズたちが放つエネルギッシュでパワフルなステージに、まさに「明日への活力」を貰ったような思いだ。
今回の上演では、話題作ゆえチケット入手が困難だったという話も多く聞く(またこの時世で観劇を断念せざるを得ない方もたくさんいるだろう)。気が早いかもしれないが、今後再演がかかることを今から願わずにはいられない。
詳細は公式サイトで。
(写真提供:東宝演劇部 文:古内かほ)
ミュージカル『ニュージーズ』
作曲:アラン・メンケン
作詞:ジャック・フェルドマン
脚本:ハーヴェイ・ファイアスタイン
演出・日本語訳・訳詞:小池修一郎
出演:
京本大我(SixTONES) / 咲妃みゆ、松岡広大、加藤清史郎 / 霧矢大夢、松平健
増澤ノゾム、桜一花、石川新太、松澤重雄 / 平野亙、瀬野和紀、田村雄一、鮫島拓馬、栗山絵美、遠山さやか、新井智貴、大井新生、鯨井未呼斗、酒井航、清水錬、白石拓也、扇国遼、高橋慈生、田中隆雅、中桐聖弥、新原泰佑、畑中竜也、廣瀬喜一、廣瀬孝輔、廣田佳樹、本田大河、松平和希、吉田倭大、米澤賢人、脇卓史、渡辺崇人 / 生出真太郎、西田理人、ポピエルマレック健太朗
2021年10月9日(土)~30日(土)/東京・日生劇場
2021年11月11日(木)~17日(水)/大阪・梅田芸術劇場 メインホール
公式サイト
https://www.tohostage.com/newsies
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