早乙女太一、倉科カナが 《戦乱の世に翻弄される若き夫婦役》で出演 赤堀雅秋 演出舞台『蜘蛛巣城』2023年2月25日からKAAT神奈川芸術劇場ほかで上演
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『蜘蛛巣城』
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『蜘蛛巣城』が2023年2月25日からKAAT神奈川芸術劇場ほかで上演される。演出は赤堀雅秋。出演は早乙女太一、倉科カナなど。
『蜘蛛巣城』は、黒澤明監督によって1957年に公開された映画作品。シェイクスピアの四大悲劇の一つとして有名な『マクベス』を、黒澤監督が日本の戦国時代に翻案し、能・狂言の様式を応用した日本的で無常観に満ちた戦国スペクタクル作品として知られている。主人公の鷲津武時役は三船敏郎、その妻・鷲津浅茅役を山田五十鈴が演じた。
今回、マクベス夫妻にあたる武時と浅茅を演じるのは早乙女太一と倉科カナ。
また、主君殺しの濡れ衣を着せられる軍師・小田倉則保役(マクダフ)を長塚圭史、武時の盟友で武時と共に予言に翻弄される・三木義明役(バンクォー)を中島歩。そして、武時らの運命を大きく変える森に棲む老女役で銀粉蝶が出演する。
脚本・上演台本は齋藤雅文。同じく上演台本を担当する赤堀雅秋が演出を手掛ける。
STORY
日本の戦国時代、天下統一の野望を抱いた者たちが群雄割拠の様相を呈した頃、蜘蛛巣城の城主・都築国春は味方の謀反により苦戦をしいられていた。一の砦の大将・鷲津武時は二の砦の大将・三木義明と激しい戦いの末、蜘蛛手の森の中をさまよっていると、二人は森に棲む謎の老婆と出会い、二人は予言めいたことを告げられる。武時には「今宵からはあなたは北の館のお殿様、やがては蜘蛛巣城のご城主様」、義明には「あなたのお子はやがて蜘蛛巣城のご城主様」。この予言を聞いてから武時とその妻・浅茅の運命は大きく変わり、予言に誘われるかのように動き出す――。
上演台本・演出 赤堀雅秋 コメント
まずこの作品の演出の依頼を受けた時、「何故、今この作品を現在の観客に提示するのか」という事を考えました。もちろんエンターテインメントとして単純に喜んでいただくというのは大前提として。
『蜘蛛巣城』といえば、言わずもがなシェイクスピア『マクベス』を原案とした黒澤明監督の映画作品。その主人公は三船敏郎。今回の舞台版『蜘蛛巣城』はそれとはまったく印象の違う早乙女太一が主人公を演じます。そしてその妻は倉科カナ。若い夫婦が戦乱の世に翻弄される顛末。歴史に織田信長が登場する直前の混沌の世。下剋上の世。
それでも人間の心の在り方は何も変わりがありません。戦乱の世は、決して二次元の世界ではなく、我々と地続きにある現実的な世界。その生々しい痛み、愚かさ、そして愛しさを、舞台という生々しい空間で感じ取っていただけたら幸いです。
脚本・上演台本 齋藤雅文 コメント
黒澤監督の「蜘蛛巣城」は、『マクベス』を日本の戦国時代に翻案し、能の手法、美意識を大胆に取り入れた映像美溢れる傑作です。大劇場の舞台用に脚色するにあたって私は、映画的スペクタクルではなく、日本人の精神性ということを強く意識しました。
たとえば神仏が混交し唯一絶対神のいない宗教観。主語を省き、曖昧さを武器にし、敬語を複雑に駆使して生まれる関係性。曖昧な「予言」に翻弄され、あらゆることが曖昧なまま、登場人物たちは「確かな何か」求めて必死に足掻き続けます。その湿度の高い主従関係、夫婦の愛情を描くには歌舞伎の科白など、いわゆる「時代劇の手法」が相応しく思われました。
この台本は、『マクベス』を「本歌取り」しつつ、普遍を求めながら独自性に固執する日本人の「業(ごう)」の物語だと思っております。赤堀さんの独自の視点から、KAAT発の新たなる『蜘蛛巣城』が生まれることを楽しみに致しております。
KAAT神奈川芸術劇場芸術監督 長塚圭史 コメント
本作に「若さ」という要素を加えると聞き非常に楽しみです。身の程を知らず、あるいは今ある幸福を幸福と信じられず、本懐を忘れて暴君と化してゆく鷲津武時=マクベスに「若さ」を注入する。ぬかるみをジタバタともがきながら滑っていく赤堀版が目に浮かびます。
赤堀さんの人間を見つめる目は、一見すると冷徹だけれど優しい。弱者や敗者への厳しくも穏やかな慈愛の目線がある。恵まれない者たちのことを笑っても、そのそばから離れることはありません。寧ろ無自覚に笑う者たちをジロリとやって冷や水を浴びせるのです。
さてこの赤堀さんの眼差しが、簡潔で勇壮且つ典雅な齋藤雅文脚本による『蜘蛛巣城』に加えられることで、登場人物がいかに生き物として蠢くのか。「普通」が推奨される現代で、「特別」を求める主人公は私たちに何を思い出させてくれるのか、「忘」シーズン最後のホール公演を飾る赤堀版『蜘蛛巣城』に大いに期待すると同時に、私も出演者として、若き鷲津夫妻に思い切り翻弄されたいと思います。
早乙女太一 コメント
赤堀さんが演出を手掛ける舞台に参加させて頂くのは、2017年に上演された『世界』以来、約6年ぶりになります。あの時、経験できた舞台作りの時間は、とても大きな経験になりました。
今作に参加出来ることが決まった日から、ほぼ毎日この舞台のことが頭をよぎり、その度に心臓が締め付けられては鼓動が高鳴ります。まだ随分先の舞台なのに、こんなにも前から緊張や不安や高揚感を感じるのは、今までで初めてです。それ程、自分にとってこの舞台に挑む事がどんな事なのか、日々実感しております。
そんな作品に参加出来ることを心から嬉しく思います。誠心誠意努めてまいりますので、宜しくお願い致します。
倉科カナ コメント
演出の赤堀さんとはずっと一緒にお仕事したいと切望していたので、今回お話しを頂いてとても嬉しいです。
私自身赤堀さんの演出を受けてどんな変化や気付きがあるのか、どの様に染まってゆくのか、怖くもありますが丁寧に向き合っていきたいと思います。
また「蜘蛛巣城」が舞台でどう蘇るのか、一演劇ファンとして今からとても楽しみです。
長塚圭史 コメント
KAATより演出をお願いした赤堀さんから出演依頼を頂いた時は驚きのあまりひっくり返りそうになりました。お引き受けした以上はご期待に添いたいと思います。ここ10年ほど自分自身が演出する舞台にしか立っていなかったので恐らく大変に苦労したり、楽しんだり、色々新鮮なことになるでしょう。『マクベス』でいうところのマクダフという大役ですが、そこはあまり気負わずに小田倉則保という忠臣の人物像に少しでも寄り添えればと思います。
中島歩 コメント
『蜘蛛巣城』という荘厳なタイトルに皆さま尻込みしてしまうかもしれません。というか僕もしっかり尻込みしております。いつも駅から家までを歩いて運動した気になってるのに急にチョモランマに挑むような気分です。
でも演劇の大きな山をガンガン登ってるようなすごい方々と作るので大丈夫です。
そんなに尻込まずにぜひ劇場にいらしてください。
銀粉蝶 コメント
存在の耐えられないヤルセナサ。――赤堀さんの作品を思うとき、最初に浮かぶ言葉です。でも、今回はあの黒澤明監督の『蜘蛛巣城』の舞台化だときいて、驚きました。黒澤映画で思い出すのは三船敏郎のギラギラと野心に燃える眼。そんなものは赤堀作品とは無縁のものに感じて、それで驚いたのですが、いまはワクワクしています。わたしの知らない赤堀さんに出会える予感があるから。それに、『蜘蛛巣城』は『マクベス』の翻案ですけど、マクベスを苛む罪悪感はつきつめるとヤルセナサに至る。きっとそうなります。これは魔女の予言です。
公演の詳細は公式サイトで。
https://www.kaat.jp/d/kumonosujo
(文:エントレ編集部)
KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
『蜘蛛巣城』
【原脚本】黒澤明 小國英雄 橋本忍 菊島隆三
【脚本】齋藤雅文
【上演台本】齋藤雅文 赤堀雅秋
【演出】赤堀雅秋
【出演】
早乙女太一 倉科カナ 長塚圭史 中島歩 長田奈麻 山本浩司 水澤紳吾
久保酎吉 赤堀雅秋 銀粉蝶 ほか
2023年2月25日(土)~3月12日(日)/KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉
公式サイト
https://www.kaat.jp/d/kumonosujo
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